Thu, January 18, 2018

2009年8月号(7月5日発売号)スラムの子どもたちの嘆き


スラムの子どもたちの嘆き     ソトコト8月号(7月5日発売号)

私がスラムの奥地で運営するマゴソスクールの近所の長屋で、女の子がレイプされた。まだたったの10歳だった。
周りの人々は誰が彼女をレイプしたかを知っている。同じ長屋に住む、酔っ払いで無職の男性だ。
ところが、女の子の母親は、彼を訴えないことに決めたと宣言した。「私たちは誰もが人間ですから、彼のことを許します」と言うのだ。
その長屋は、30世帯ほどがぎゅうぎゅう詰めになって暮らす貧しい長屋で、その全員でひとつのトイレを共同で使い、各世帯は6畳程度の狭い一部屋に何人もが寝起きし、隣りの部屋の音も筒抜けなくらいの過密状態で暮らしている。
だけどその長屋の隣りも、またその隣りも、状況は同じかもっと悪く、ここが不満だからといって他に行くところはどこにもない。
だから住民たちは、周りの人々の顔色を伺いながら、問題を起こさないように気を使ってつつましく暮らしている。
野菜売りをして細々と暮らすその母親は、娘がレイプされたことは当然悲しいけれども、あまりにも貧しく生活も苦しいので、起ったことは運が悪かったのだとあきらめて、許して忘れてしまいたいと思っているようだった。
そうして、騒ぎも次第におさまっていき、そして何事もなかったかのように普段の生活に戻った。
今でもそのレイプ魔のオヤジも、そしてレイプされた女の子も、同じ長屋に暮らしている。母親は、彼と顔を合わせることもあるだろうが、
口をつぐんで何も言わない。周りの人々も何も言わない。そうやって折り合って生きていかねばならない。
いくらなんでも、あんまりではないか。

数ヵ月後に私の友人が彼女をひっそりとHIV検査に連れて行った。幸い彼女はHIVに感染していなかったのでほっとしたが、レイプで感染するケースはとても多いのだ。しかも、2歳や3歳という幼児や、赤ん坊までがレイプされることがある。
HIV陽性者が小さな女の子と性交渉を持つと、清められて治るという迷信が一時期広まったからだと言うが、あまりにもひどすぎる。
エイズは今ではケニアでも無料で薬が得られるが、この薬を服用するためには高タンパク質で栄養価の高い食事を取らなければならない。スラムの貧困者は満足な食事を取ることは難しい。結局、たとえ薬が無料でも、貧乏人はあっけなく死んでいかねばならないのだ。

ケニアの国会議員や裁判官たちは、月給100万円以上を取り、さらにそれは免税だという。彼らには、このケニアの子どもたちの嘆きは聞こえないのだろうか。

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