Tue, August 21, 2018

2008年4月号(3月5日発売号)ケニアの闇と光


ケニアの闇と光                        ソトコト4月号(3月5日発売号)

ケニアでは昨年末の12月27日に大統領選挙が行われたが、その結果をめぐって国中が大混乱に陥り、死者1000人以上、避難民35万人以上といわれる大惨事に発展した。

キバキ大統領の再選勝利が不正によるものだとして、対立候補ライラ・オディンガ氏の支持者たちが抗議。デモ行動を起こしたものの、圧倒的武力行使で徹底的に制圧され続け、怒りが爆発した民衆は暴徒化し、街の破壊、放火、略奪、パンガ(ナタ)を手に対立民族の殺戮、レイプなどが横行、国家崩壊が危ぶまれるほどの事態となった。現在は、コフィ・アナン前国連事務総長の仲介による調停が進められている。

私が孤児や貧困児童のための寺子屋を運営するキベラスラムは、一瞬にして戦場と化した。どうしようもない貧しさの中、それでも何とか生き抜いていくためにコツコツと働き続け、多民族で精一杯の調和を保って暮らしてきた生活の場、無言で成立していた秩序が、根底から破壊され揺らいでいる。かつての隣人が殺人鬼に変身し、集団で襲ってくる。報復につぐ報復。簡単には修復できない傷が、奥深くまで刻み込まれてしまった。

今回のことには、ケニア国民同士でも裕福層と貧困層の間では大きな温度差がある。戦いに行った若者たちの多くは、守るものも未来への希望もない、不満が鬱積した貧困層だった。安定した職がある者たちは戦いを避け、状況を憂いた。あとにも先にも何もない貧困層の若者たちが、怒りにまかせて暴徒化し、抗議行動を武力で制圧され続けた末に、やり場のない怒りを爆発させてナタを振り回し、互いに切りつけあったのだ。貧困層が国民の半数を超え、貧富の格差が拡大し続けていたにも関わらず、この5年間、ケニアは好景気で経済成長率がマイナス0.3%から7%まで引き上げられたと発表されていた。そんな矛盾にも耐え忍び、大統領選挙に望みを託していた貧困層は、我慢も限界に達して爆発したのだ。

しかしその結果、貧困層はますますどん底に突き落とされることになった。貧しい者たちが何とか生き抜いていくことを可能にしていた地域社会の輪は崩れ、わずかな日銭を得るための細々とした経済活動すら破壊された。

これから先の未来に、希望はあるのか。長年ケニアに暮らしてきた私にも、さすがにわからなくなってしまった。だけど、あからさまな闇と混乱の中にも、決して消えない光明がケニア魂の根底にあると信じ続けたい。誰の目の前にも、何を信じて生きるかという選択が突然突きつけられたようだ。対立民族への憎悪の殺戮の最中にも、他民族の隣人を命がけで隠まった人々もいた。多数の避難民を救うための動きは、国際社会が動き出すよりも先に、ケニア国民の中から沸き起こった。

私は、スラムの仲間たちと共に、ひとりでも多くのスラムの子どもたちに安心できる場所を提供することにだけ気持ちを集中させ、授業と給食、食糧配給を続けている。この子どもたちが大きくなったとき、ナタを手にして殺しあわずにすむように、光を見失わずにすむように。深い闇の中にこそ、光はより際立つのだと信じて、ひたすら前に進んでいくしかない。

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