Thu, January 18, 2018

2008年8月号(7月5日発売号)国内避難民の帰還


国内避難民の帰還                        ソトコト8月号(7月5日発売号)

5 月5日から、ケニア各地の国内避難民の帰還がはじまった。ケニア全土で35万人以上も出たといわれている避難民は、大統領選挙後の暴動で家を焼かれた人々や、略奪の被害にあった人々、部族間対立で命の危険にさらされた人々だが、各地の警察署敷地内や教会、空き地や公園などがキャンプ地となり、4ヶ月もの避難生活をしていた。それらのキャンプを解体して、各自、もともと住んでいた場所か、先祖代々の故郷かのどちらかに帰還することを自由意志で選択し、その帰還を政府が助けるということになっている。

ひとことに帰還といっても事はそんなに簡単ではない。政治的に安定したからもう平和になりましたよ、さぁ心配しないで以前の住まいに帰りなさい、と言われても、家は焼けて何もかも無くなってしまったし、感情問題による恐怖もある。細々と商売をして生計を立てていた人も、商品や店などすべてを失い、再建させる財力もない。農民たちも、畑は荒れ果て、農具も失い、種や肥料を買う元手もなく、住む家すらないのだから、途方に暮れている。雨季がはじまり、本来ならば農民が植付けをしなければならない時期なのに、畑を耕すどころではない農民が大勢いるので、ケニアでは今後の深刻な食糧危機が懸念されている。

そもそも、これほどの避難民が出てしまった背景には、大統領選挙の結果だけが真の原因だったわけではなく、それよりももっと以前からの積み重なった感情と土地問題が根底にあった。ケニアがイギリスに植民地支配を受けていた時代に、多くの農民たちは貴重な土地を奪われていた。そこで1963年の独立以降、土地を失った農民たちやスラム居住者などに土地を与え、もともと農耕地ではなかった場所に開拓農民として入植させるという政策が行われた。これは、貧困者の救済策でもあり、農業生産を上げるための国策でもあった。しかしこの恩恵を受けた人々には、出身部族によるかたよりがあったとして、人々の感情には不平等感が植えつけられた。それが積み重なっていき、今回の大統領選をきっかけとしてその積年の不満が爆発した。

私は、このかつての開拓農民の中にも、また、その反対で先祖伝来の土地を農耕民に侵食された人々の中にも、友人や家族がいる。だからその両方の言い分を耳にする。60年代に荒地に入植した農民たちは、水もなく岩だらけの荒地をいかに苦労して開墾していったかを語るし、植民地時代に自分たちの部族が受けた不当な扱いを語る。農耕民に侵食された牧畜民たちは、牧畜生活を維持するための土地や水源が不足し、困窮している。

多くの人々は、気のいい善良な田舎の人々だ。そんな人々が、国策や、ごく一部の強欲な支配者の私欲に翻弄されて対立感情を持ち合わなければならないのはとても悲しい。

ケニアの長老たちから聞く昔話は、古き良きアフリカのおおらかさを湛えていて、話に聞き入っていると目の前に広大な大地やゆったりとした時間の流れがイメージとして広がってくる。もう戻らない懐かしい楽園。時代は後戻りできないし、歴史はなかったことにはできない。この世知辛い時代に、新しい価値観、新しい生き方の指針が必要だ。それはケニアだけの話ではなく、世界すべてにいえることではないだろうか。

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