Tue, June 19, 2018

2008年10月号(9月5日発売号)笑いの原子


笑いの原子                                         ソトコト 10月号(9月5日発売号)

ある番組の取材を手伝って、ケニアの大統領選挙後に勃発した暴動に関してスラムの人々へのインタビューを行った。
そのインタビューに応えて、スラムの若者たちの中で戦いの最前線に出て行った人がこのように語った。

「一瞬にして怒りが爆発した。自分もナタや石を手に最前線に出て行った。そうすれば、この困難な世の中の何かが変わると信じたのだ。大声を上げながらナタを振り上げ、線路を剥がす群衆の中に自分がいた。目の前で人が切りつけられ、血を吹き出し死んだ。
爆発した怒りは伝染して拡大し、狂気の中にいる我々は、すでに何のために戦っているのかもわからなくなっていた。
何日もそんな戦いの中にいたあと、突然、はっと我に返った。こんなことをしてはダメだと思った。
それからは、周りの人に、もう戦うことをやめようと説得して回った。
今になって思うと、そうやって戦って多くの人々が死んでも、世の中は何も変わらなかった。
今ではとても後悔している。今度もしも同じことが起こったとしても、私はもう二度と武器を持たないと決めた」

私は、この暴動での体験をずっと消化しきれずにいて、心の中に重い鉛を抱えているような想いがしていたのだが、
この若者の話を聞いたことで、やっと出口のない迷路から抜け出る一歩を踏み出せるような気がした。
もちろん、こうして人々が殺し合い家に火を放ちあった戦いを、納得することは決してできないが、
一瞬にして伝染する狂気とはこういうことかと、つくづく知った。

最近になって、偶然ある記事を目にした。それには、アインシュタイン博士が晩年に研究したという、「笑いの原子」の話が紹介されていた。なんでも、彼はフランス南部に残された2万年ほど前の石器時代人が描いた「昇る朝日を浴びながら大笑いしている人々」の壁画に着目し、その中に存在する究極のハーモニーの意味を物理学的なアプローチで確かめることにしたという。
彼は、人類史に残された笑いの記録を世界中から取り寄せ、そのサンプル数は12万を突破した。
各サンプルが生まれた社会におけるエネルギーのあり方と、社会システムについてのデータを調べ上げて整理した。
それにより、彼が発見したのは、「笑いの原子」の存在だったと、その記事には書かれていた。

「笑いの原子」は「笑いの分子」を構成し、「笑いの分子」は例えばやがて人体の器官など、様々なモノを構成するに至る。
そして複雑多様な世界ができあがる。世界は笑いの分子からできているのだ。

「笑いの原子」は放置しておくとだいたいのところ7万秒ほど(約20時間)で変質するという。
ネガティブに変質した「笑いの原子」は、活性化させればまた正常な状態(ポジティブ)に変質することができる。
それを本能的に察知していた石器時代の人々は、みなで腹を抱えて笑うことで、バランスを取っていたのではないか?
という仮説が提示されている。

これが本当にアインシュタインが研究した内容なのか、はたまた捏造されてネット上で流行しているだけの話なのか、
私には確認できていないが、暴動で狂気を体験したあとの私にとってはとても納得がいった。
十分な量の笑いを発生させ、世界に氾濫しているネガティブ「笑いの原子」を活性化させれば、
この狂った世の中も少しはバランスが取れてくるのではと信じさせてもらえる内容だった。
実際、激しい抗議行動では、ちっとも功を奏さないもどかしさを自分自身も感じ続けていたところだ。

人類が再び朝日を眺めておおらかに笑える時代が来るように、「笑いの原子」活性化運動をはじめよう。
まずは自分が腹を抱えて笑うことからだ。

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