Wed, August 22, 2018

2008年11月号(10月5日発売号) カカオ農場の子どもたち


カカオ農場の子どもたち                           ソトコト 11月号(10月5日発売号)

テレビ番組の取材で、西アフリカのある国に行った。チョコレートの原料になるカカオを栽培している農場で、家族みんなで力を合わせて働いている一家を取材させてもらった。とても素朴で心温まる桃源郷のような村で、優しい村人たちにおいしいお食事までごちそうになり、とても楽しく過ごしたのだが、過酷な重労働や生活の様子を目の当たりにして胸が痛む想いだった。私たちが普段なにげなく口にしているチョコレートだが、実際にその原料を生産している人々に出会ったあとには、チョコレートを食べるたびに彼らの笑顔が思い浮かび、一粒一粒がとてつもなく貴重なものに思え、大切に味わうようになった。

私が取材させてもらった一家は、カカオの栽培から収穫、実を取り出して乾燥させるまでの作業を家族全員で行っていたが、数ヶ月にいちど、それを出荷して得られる収入が日本円にして6000円程度だと聞き、愕然とした。それでも、そのわずかな収入で一家が生活できることをありがたいと言っていた。子どもたちは村の小学校に通い、学校から帰ってきたら家業を手伝う。子どもたちは見事な手さばきでカカオを収穫し、運び、実を割り、とても働き者だ。

取材には、現地の事情をよく知る地元ガイドに同行してもらったが、彼は、かつて外国のテレビ番組の取材でこういうカカオ農場の子どもたちのことを児童労働問題として取り上げられたことに憤慨して、ピリピリと緊張していた。児童労働のイメージがついてチョコレートが売れなくなると、この国の経済に大打撃を与えるので困るという。あれを撮ってはいけないとかこれは誤解されるからやめろとか、取材にもしきりと規制が入る。チョコレートが売れなくなると、こうしてカカオを作っている一般農家にも打撃を与え、結局はこの子どもたちを苦しめることになるのだという彼の必死の訴えには納得がいった。しかし、実際には、学校にも行かせてもらえずに過酷な労働を強いられているような子どもたちがいることも事実であろう。限られた時間枠では、そのすべてを紹介することは難しい。

この村まで連れて行ってくれた運転手は、「僕も、家族のカカオ農場で子どもの頃から手伝ってきた。そのおかげで学校に行くことができたんだ」と言っていた。しかし、そんな一昔前と比べて、今ではカカオの値段も下がり、昔よりもさらに生活は苦しくなっているという。

バレンタインなど巷にチョコレートが溢れる季節になるといつも思う。なぜこんなに安いのかと。チョコレートにしろ、コーヒーにしろ、底辺にいる一般農家の苦労を思うと、こんなに値段が安いのは間違っていると思えてくる。だからといってどうすればいいのだ。「買わない」ことでは決して解決にはならない。

生産者の顔が見える正当な取引を。不利な条件にある子どもたちに教育の機会を。豊かな国の人々が無駄な浪費をやめること。できることはたくさんあるが、まずは本当のことを知らなければはじまらない。アフリカの人々のナマの声がもっと世界各地に響いていくことを心から願う。

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