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2007年11月著その1 スラムの地上げ屋教会


スラムの地上げ屋教会                         2007年11月15日

私たちがケニアのキベラスラムで運営している貧困児童のための寺子屋は、次々と子どもたちがやってきて増え続けていくので、すっかり狭くなってしまった。20人ではじまったのが今では208人。椅子にも床にも子どもたちがいっぱい、そして夜には教室の床で子どもたちがゴロゴロ寝ているというありさまなので、これはもう限界だと思いはじめた。するとうまい具合に、おとなりの長屋が売りに出ているというではないか! これはすぐに押さえなければと飛びついた。

スラムの掘っ立て小屋といえども、どの家にもちゃんと大家がいて、人々は誰もが家賃を払って暮らしている。キベラは歴史100年以上、人口80万人の古くて巨大なスラムなので、国の法律とは関係のない、住民間の秩序と掟があるのだ。確かに、政府の土地を不法占拠した形の違法の居住区なのだが、住民たちの間だけに通用する居住権が存在しており、その売買もされているというわけだ。

さて、私たちは寺子屋拡張のために、売りに出ている隣りの長屋を購入すべく、大家に交渉しにいった。売買には、誰もが知っている常識的な相場があるため、交渉は簡単に成立するはずだった。

ところが、驚いたことに、希望価格が突然、いつもの倍以上になっているではないか。私にはとてもそんなお金はないので、あきらめるしかなかった。6部屋の長屋が、普段の適正価格12万シリング(24万円)だったところ、急に、30万シリング(60万円)にあがっていたのだ。

これは一体どうしたことかと思って、周りの人々に聞いてみたら、ここ最近、このエリアの長屋を大量に買収している某教会のせいだという。その教会は最近、スラム内に周りの住居とまったく調和していない巨大な教会を建設したのだが、それだけでは足りず、まだいくつかの施設を作るために、その周辺の長屋を相場の倍額で次から次へと買いあさっているらしい。

大家としては相場の倍で売れるからホクホクである。ところが、長屋の狭い一室で、家族全員で肩寄せ合って暮らしているテナントたちは、追い出されても他に行き先がない。当然、家賃も高騰していくし、人口過密のスラムではそう簡単に空き部屋は見つからないのだ。

その教会は、スラムの人々を救済するためにスラムの中に教会を建て、活動しているのだというが、あまりにもスラムの基本常識を知らなさすぎる。彼らの活動のひとつに「貧困児童の生活費支援」というのがあるのだが、子どもをだしにしてその教会から金を受け取り、子どもには食事すら満足に与えていないろくでなしのおやじを私は知っている。その家庭には、子どもが8人いたのだが、母親が貧困に耐えかねて子どもたちを連れて田舎に帰ってしまった。ところが、教会から生活費支援を受けている受給者のシャロン(10歳)だけは母親についていくことを禁じられた。父親が、彼女が受ける生活費支援の月額3000シリング(6000円)が欲しいからだ。ちなみに、スラムの貧困者たちの中で、月額3000シリングを順調に稼げる人は、なかなかいない。

私たちは、地上げ屋教会のせいで、寺子屋の拡張ができなかった。しかたないので、相変わらず狭苦しいところに子どもたちがギッチリ詰まって勉強している。自分たちはいい活動をしていると信じきっている教会のお偉いさんたちは、こんな矛盾にはきっと一生気付かないことだろう。スラムのど真ん中にそびえたつ立派な教会を眺めていると、なんだかバカバカしくて、笑うしかなくなってくる。もしかしたら、中には裸の王様が座っているのかもしれない。

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