Wed, September 20, 2017

2005年3月著その2 新しい人生


新しい人生                                 2005年3月11日

私の友人、フリーダはナイロビのキベラスラムで診療所と産院を運営するケニア人の助産婦だ。国立病院に勤めていたが、退職金をすべてはたき、さらに自宅を抵当に入れて銀行から多額の借金をして、スラムの中に産院を建設した。極度の貧困に苦しむスラムの女性たちの中には、狭い長屋の一室で出産するしかない人々も多く、出産後もゆっくりと体を休めることもできない。同じ女性として、そのあまりにも苛酷な状況をなんとか改善したいとフリーダは願ったのだ。

彼女の産院には、様々な事情を抱えた女性がやってくる。どうしようもなく貧しいのにまた妊娠してしまったと、途方に暮れて中絶を求めてくる人もいる。フリーダは、妊娠中絶は決して行わない。中絶希望者には、費用はいらないからここで子供を産んで、置いていきなさいと彼女は言う。スラムでは、望まぬ妊娠をした人が、汲み取り式トイレに赤ん坊を産み落としたり、生まれてすぐに赤ん坊をビニール袋に入れてドブに捨てる事件があとを絶たない。どん底の貧しさのせいもあるし、HIVに感染している母親が「子供も必ずエイズになるのだ」と思い込むことも多いという。実際には、たとえ母親がHIV感染者でも、産後すぐに適切な処置を施せば、赤ん坊の感染は避けられる可能性は高いのに、その知識がないためにいたいけな命が奪われていく。フリーダはそんな命をひとつひとつ救っていくために日夜働いている。

彼女の産院で出産し、その直後に赤ん坊を置いて立ち去っていく女性たちを、フリーダは追わない。どうにもならない彼女たちの状況は痛いほどわかっているし、ドブに捨てられなかっただけでもよかったと思うからだ。それからあとは、赤ん坊の行き先を探さねばならない。ナイロビのキリマニ地区に、New Life Home という施設がある。イギリス人の宣
教師夫妻によって設立された、捨て子や孤児、HIV陽性の赤ん坊を救済する施設だ。フリーダは行き先がない赤ん坊を、これまでに何人もこの施設に連れていっている。

「このNew Life Home という名前には、あまりにも苛酷な条件を背負って生まれてきた子供たちに新しい人生を授けようという想いが詰まっているのよ。だって、やっとのことで生まれてきたのに、親からいらないって言われるなんて、あんまりじゃない?」

私もこのNew Life Homeを覗いてみたら、とても手厚く保護された赤ん坊たちが、きれいな衣類に包まれて、バギーに乗って庭をお散歩させてもらっていた。ヨーロッパから養子縁組に来たらしい夫婦が、顔をほころばせて赤ん坊を抱き上げた。フリーダも、こんな赤ん坊のひとりを養女にした。その子、クリスタルは、愛情をいっぱい受けて、とてもかわいらしい3歳の女の子に成長した。

これからどうか思いきり幸せな人生を生きて欲しい。この赤ん坊たちは、ひどすぎるスタートで悲しみや苦しみはすべて使い切ったはずだと信じたい。

New Life Home http://www.newlifehometrust.org/

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