Thu, November 23, 2017

2005年7月著 ハチミツの魔法


ハチミツの魔法                                     2005年7月20日

私は仕事でマサイマラ国立保護区に行くことがよくある。日本からの観光客を10人連れてマサイマラのロッジに到着したら、門の前でマサイの友達が待っていた。私が来ることを聞きつけて、サバンナを8時間歩いて会いにきてくれたのだ。手に小型のバケツを提げている。

「君へのおみやげだよ」

彼はそう言ってバケツを私に渡し、赤い布をはためかせながら去っていった。

なんだろう。そっとバケツの蓋を開けてみると、中には黄金色のハチミツが入っていた。

蜂の巣がそのまま入っているマサイのハチミツは、私の大好物だ。雨が降る季節になると、マサイランドのサバンナにはアカシアの花が咲く。白や黄色の小さな花だ。アカシアのハチミツは色が薄く、香りが高くてとても美味しい。収穫期にマサイの人々の家を訪ねると、大きな容器になみなみと注がれたハチミツが出されることがよくある。いくらなんでも、どんぶり一杯のハチミツを食べれるわけはないだろうと思うだろうが、マサイのハチミツの場合は特別だ。さっぱりとしているので、いくら食べても胸焼けしない。爽やかな甘さと花の香りが、サバンナの風を連想させる。

彼らにとって、ハチミツはとても神聖なものだ。伝統儀式のときにもハチミツは欠かせない。お目当ての女性に結婚の申し込みをするときには、まずは彼女の両親にハチミツを届ける。両親がそのハチミツを食べたら、結婚を承諾したというしるしだ。その次には、再び届けられたハチミツを使って彼女の家族がお酒を造り、周囲の人々に振舞う。それによって、地域の人々は彼女が結婚するということを知る。なんとも風情のある習慣ではないか。

この話を聞いて、日本で養蜂をやっている私の友達は喜んだ。

「世界にハチミツを神聖としている民族がいるというのは感激だな。知っているかい? ミツバチは、一生をかけて小さじ半分くらいのハチミツを集めるのだよ。まさに、命をかけて集めた宝物なんだ」

ケニアの海岸地方では、色鮮やかな熱帯性の花から採れる濃厚なハチミツをもらった。マサイのハチミツよりも色が濃く、コクがあってこれもまたたまらなく美味しい。気候が違えば花も違い、ハチミツの味も違ってくる。これは当たり前のことだけど、スーパーマーケットの棚に並んでいるハチミツからはそんな違いをなかなか実感できない。

ミツバチの一生に想いをはせながら、目を閉じてハチミツをなめる。目の前に、彼らが生きたサバンナや熱帯の森が広がっていく。いいもんだ。

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