Thu, November 23, 2017

2005年8月著 サバンナティー


サバンナティー                              2005年8月8日

アフリカ在住33年の神戸俊平先生の家に遊びに行くと、香り高くとてもおいしいお茶をごちそうしてくれる。その名を「サバンナ・ティー」という。もっともこれは神戸先生が命名したもので、この銘柄のお茶が市販されているわけではない。濃く煮出したお茶は一見すると麦茶のようだが、飲んでみるとほのかに草原の香りがする。神戸先生はアフリカで野生動物や自然環境を守る活動をしている獣医だが、サバンナを歩き回りながら仕事のついでにこの「サバンナ・ティー」の採集もしているのだ。棚に並んだお茶には、それぞれ採集した場所と日付が書いてあるので、その日の気分に応じて好きな場所を選べばいい。飲めば体がぽかぽかと暖かくなり、やたらとトイレが近くなる。血液の循環が活性化し、体のすみずみまですっきり爽やかな気分になってくる。さてこのお茶の実態は? 実はこれ、野生の象の糞を乾燥させたお茶なのである。

そもそも象の糞は、アフリカ各地で薬として古くから利用されてきた。ナミビアのヒンバ民族を訪ねたときには、中耳炎の治療に象の糞を煮出した汁を耳に流し込むと聞いた。神戸先生の場合は、マサイの老人からお茶にして飲むと聞いて試してみたのだという。産後の肥立ちが悪い女性、虚弱体質、病後の体力回復などに効果があるらしい。象は広いサバンナを歩き回り、ひっきりなしに草や木の枝を食べている。それが完全に消化されないで排出されるため、象の糞は細かい木の枝や草のかたまりのように見える。象の体内を通過してくることで何らかの作用が働き、植物の薬効効果が高まるのかもしれない。象の消化機能には現在でも解明されていない様々な謎があると神戸先生は言う。アフリカの民族は長年の知恵と経験から象の糞には薬効があることを知っていた。サバンナ・ティーを飲むと、多種多様な動植物を育む巨大な生態系のパワーのおすそわけをもらえるようで、嬉しい気分になってくる。

陸上で生きる最大の哺乳類であるアフリカゾウの生息数は、密猟のためにこの数十年間に著しく減少してしまった。象牙の最大の消費国は日本である。体重が5トン前後の象が一日に食べる草木の量は約150キロだというが、象は広範囲を群れで移動しながら旺盛に食べ、大地にどすんどすんと糞を落とす。象の糞だけを求めるフンコロガシも存在している。生態系の絶妙なバランスは、目に見えないところで驚くべき奥行きを持って成立しているに違いない。日本の皆さん、象牙の印鑑やネックレスは買わないように。象からのお願いです。

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