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2005年12月著その2 ムガンガになる


ムガンガになる                                    2005年12月16日

めったにない重要な儀式があるから村においでと長老から電話がかかってきた。彼の妻のひとりがムガンガになるための儀式だという。ムガンガというのは、いわゆる呪術師のことだが、その中にもいくつかの種類がある。この長老自身も、薬草を使って病気の治療をするムガンガである。彼の奥さんの場合は、精霊を呼び出してお伺いを立て、様々な問題を解決するタイプのムガンガになるのだという。私もこれまでに何度か、奥地の村々でこのようなムガンガに「診断」をしてもらったことがある。地面に灰で模様を描き、手に小さなヒョウタンを持ってシャカシャカと降りながら、口笛を吹いたり小鳥が歌うような声でつぶやきながら精霊と話をする。病気や家庭内のいざこざなど何らかの問題が生じたときに、このようなムガンガに相談をしに行くことは、彼らドゥルマ民族にとってめずらしいことではない。勘が鋭い女性や、憑依体質の人、夢を見て予言をする人などが村には何人かいて、その症状が強くなってくると近隣の村々の有力なムガンガに弟子入りし、指導を受けながら、完全なムガンガになるための修行を積むのだ。アフリカの奥地の村であれば、このような世界が日常生活の中に生きているのは普通のことだ。ところがそこは、ジャングルの奥深くに埋もれている村ではなく、大きな町がすぐ目の前の、都会と背中合わせの場所にある。ナイロビからモンバサという港町まで続く幹線道路が村のすぐ横を走っており、コンテナーを満載させた大型トラックが轟音をあげながらひっきりなしに通り過ぎる。そのハイウェイと、ぎゅうぎゅう積めの列車が走る線路との間に挟まれたエリアに、このミリティーニ村はある。道路を隔てて向かい側には大きな工場があり、夜間はこうこうと電気がついている。村には電気がない。ここで何かの儀式があるときは、村の広場に村中の人々が集まって、真っ暗闇の中でタイコを叩いたり歌ったり踊ったりする。そのすぐ横を、列車が通り過ぎる。この列車は観光客もよく利用している列車だが、村の子どもたちは列車に向かって思いっきり手を振る。

一人前のムガンガになるための重要な儀式は、近隣の村々からもムガンガたちが集まり、薬草を浸した聖水を振りまきながら、精霊を呼ぶタイコと歌、踊りが一晩中行なわれた。そのとき通り過ぎた列車に乗っている観光客が、線路脇のこの村で繰り広げられているそんな儀式をたまたま目にしたとしたら、目の錯覚かとさぞかし驚いたことだろう。明け方に、彼女が晴れて一人前のムガンガになることが認められるかどうかの「卒業試験」が待っていた。精霊が宿るヒョウタン2つを、普通の人ならばどうしても見つけられないだろう場所に隠し、それを彼女が探し当てたら合格、というわけだ。彼女はこれを難なくクリアし、晴れて正式なムガンガとなった。今ではこの村で、毎日ヒョウタンを降りながら、精霊とお話している。

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