Thu, January 18, 2018

108号 キベラスラムでCDを作ろう1


キベラスラムでCDを作ろう 1                 DDWN 108号(2007年1月号)

私は2年前にミュージシャンの大西匡哉とJIWEというプロジェクトを立ち上げて、ケニアのいくつかのコミュニティと共に音楽CDの制作をはじめた。これまでにキベラスラムの歌声のCDを2作品と、ドゥルマ民族の伝統音楽のCDを制作し、現在はマサイの歌のCDを制作中だ。

このような活動をはじめるに至るまでには、長い時間をかけて育んできた私なりの深い想いがあった。

私がはじめてアフリカを旅した18年前、コンゴ(旧ザイール)のジャングルを通り抜けたあとでたどり着いた田舎町で、どこからともなく聞こえてくる歌声に誘われて歩いているうちに、ザイール川のほとりに建つ掘っ立て小屋にたどり着いた。その中に足を踏み入れたとたん、頭のてっぺんから雷が突き抜けるような電撃ショックを受けて、私はその場に立ち尽くした。溢れるような人々がそこに集まり、天を仰ぎながら踊り、歌っていた。背中に赤ん坊をくくりつけたお母さんや、畑仕事からそのままやってきたようなおじさん、愛らしい笑顔をみせる子供たち、おじいちゃんやおばあちゃんまで、皆が手拍子を叩きながら、なんともいえない歓喜の表情を浮かべて歌っていた。その歌声の、なんと喜びに満ちて輝いていたことか。そのボロボロの掘っ立て小屋は、小さな教会だった。薄暗い小屋の中に、天から光が降り注いでいるような錯覚を受けた。

その強烈な体験のあと、何年もしてから私はキベラスラムに出会った。人口80万人もの貧しい人々が暮らす町。崩れかけた家々がひしめき合う路地裏で、私はまた光に満ちた歌声に出会った。どん底のような貧しさの中で、彼らは明日への希望や命ある喜びを歌う。日曜日には一日中、スラム全体が歌い踊っている。彼らの生活の中にある歌、そして共に歌うと身体のすみずみから力がわきあがってくるようなパワー溢れる歌声を、何らかの形にして、日本の人々のもとにも届けたいと私は思うようになった。

それでも何もできないままに、さらに何年かが過ぎた。私はいつの間にかスラムの中に寺子屋を運営するようになっていた。

そこに日本からタイコ叩きの大西匡哉がやってきた。ケニアにタイコ修行をしにきた彼は、ドゥルマ民族の長老に師事して伝統音楽を習い、村で生活しながら、ナイロビに来たときには私たちの寺子屋を訪問してくれた。

厳しい状況下で生きる人々の生活を、彼らの音楽を通じてサポートすることはできないかと、私たちは話し合うようになった。匡哉も村の生活の中で、ケニアの人々が生きる人生の困難さを目の当たりにしていた。わずかな薬代がなかったせいで死んでいかねばならなかった子供たち。この先いったいどうやって生活を良くしていったらいいのかと途方に暮れるほど、彼らが生きる社会状況はやるせない複雑な事情に満ちていた。その一方で、食べるものにすら事欠くような生活の中に、生き生きと息づく素晴らしい音楽が溢れている。

彼らと共にCDを制作して、収入を生み出し、そして日本の人々に彼らの音楽に溢れる生命力や躍動感を伝えたい。そう考えて、私たちはJIWEというプロジェクトを立ち上げた。

まずはキベラスラムの歌声と、ドゥルマ民族の村の伝統音楽の両方で、同時進行ではじめることになった。

ところがスラムも村も、電気のない生活をしている。電源なしにいったいどのようにレコーディングを行うか? 機材もなければ資金もない。あるのは皆のやる気と音楽だけだ。

何もないところから、何かを作り出していく。この挑戦には、多くの喜びと困難、様々な工夫と助け合い、そして心の奥底から揺さぶられるような感動が待っていた。力を合わせて作業を進めていく中で、スラムと村の両方で深い友情が芽生えていった。

泣いたり笑ったりびっくりしたり、CD制作から生まれた様々なエピソードを、これからお伝えしていきたい。(次号に続く。)

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