Wed, October 17, 2018

キベラスラムの住居改善プログラム 


ソトコト12月号(11月5日売り)

キベラスラムはケニア最大のスラムで、人口は100万人を超えるといわれている。このキベラスラムのアップグレードプログラムが2004年から本格的に行われている。ケニア政府が国連ハビタット(国際連合人間居住計画)との連携で行っているものだ。

この計画は、まずスラム住民を一時的に移動させるための新住居を建設し、キベラスラムの13の村をさらにいくつかのゾーンに分けて、ゾーンごとに住民が移動。退去したゾーンの住居を撤去し、整備してさらに新住居を建設する。それを繰り返していって3年から5年の間にキベラスラム全体をクリアしようというものだった。ところが計画は遅れに遅れて、2009年9月にやっとはじめの1500人、300世帯が移住した。同年12月までに13の村のひとつであるソウェト村のゾーンAとBからの移住が完了した。しかしこのペースで行っていくと、キベラ全体のアップグレードが完了するまでには5年どころか、1178年かかるという計算が出た。気が遠くなるような話だ。

実際にその対象エリアを取材してみて驚いた。報道では、きれいな住居に移れて大喜びの住民たちが紹介されていたが、実際には、その枠にすら入れなかった「取り残された人々」がさらに絶望的な状況で放置されていた。その理由は、ID(身分証明書)を持っている者だけが新住居を提供される対象となっていたからだ。スラムの貧困者の中には、貧しかったからこそ病院で出生できず、出生証明書も持たず、成人に達してもIDを得ていない人が、特に無学の女性たちに多い。そんな人々はプログラムにも入れず、細々と生き抜いていたスラム住居からも追われた。

そんなひとりであるユニスさんに出会った。彼女は市場でとうもろこしを仕入れ、それをスラムで売って生計を立てているが、一日よくて30円か40円しか稼げない。娘がひとりいるが、2回目の妊娠でHIVに感染していることがわかり、男は出ていった。生まれた赤ん坊は栄養失調と下痢で、生後1ヶ月で亡くなった。その上、IDを持っていなかったので住居も失った。彼女はキベラスラムの路上で物乞いをしていた。道行くスラム住民がわずかな小銭を彼女に手渡していた。強烈に胸が痛んだ。

現在ケニアはミニバブルのような状態で、ナイロビや地方都市は建設ラッシュだ。それなりに収入がある人々を対象に、様々なローンのシステムが登場し、ちょっと賢くなれば夢のマイホームが持てますと、ラジオや新聞、テレビなどでもさかんに宣伝している。ナイロビ郊外は拡大していき、新興住宅街が次々と建設されている。そんな喧騒を眺めながら、日本の高度経済成長期もこうだったのかなと想いをはせる。現在ケニアはビジョン2030というスローガンを掲げていて、国民一丸となって2030年までには「ミドルクラスの国」に昇格しようと、夢を抱いて働いている。きっとケニアはそんな可能性に満ちた国だろう。一般の国民には明るい夢がある。

そんな高揚感の一方で、取り残された人々がいる。ラインから放り出され忘れられた人々は、どん底に置き去りにされている。どうすればいいのだろう。明確な答えは誰も教えてくれない。

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