Tue, June 19, 2018

大旱魃のあとの大洪水


今年の夏、ケニアのマサイマラ国立保護区を訪れた観光客は、あまりにも多くのヌーが草原を埋め尽くしているのを見て大喜びしたことだろう。私は反対にいやな予感でぞっとした。だって、いくらヌーの移動期だとはいえ、ここまで多いのはこれまで見たことがない。サバンナを行けども行けども、ヌーだらけ。まるでイナゴの大群かのようなヌーの群れが、サバンナを真っ黒に埋め尽くして、バリバリと草を食べている。しかしこの草がどう考えても足りないのだ。今年、ケニアは大旱魃で、川の水位がすっかり下がってしまっている。マサイマラ国立保護区を流れるマラ川は、タンザニアのセレンゲティ国立公園から移動してきたヌーの群れがダイナミックに渡ることで有名だが、この水源はマウ・フォレストという森にある。この森が、欲深い政治家たちの触手によって伐採されている。そのせいで、マラ川の水がなくなってしまった。例年ならば、大量のヌーが水しぶきをあげて命がけで渡る川が、今年はちょぼちょぼっというくらいで、あっけなく渡れてしまう。本来ならば、年末年始にかけてセレンゲティで生まれたヌーの子どもたちは、夏にケニアまで移動してきてこの川渡りを通過すると、約3分の1の数が死ぬという。それによって自然のバランスは保たれてきたわけだが、例年ならヌーの死骸が山のように流れ着くポイントに、今年はまったくヌーの死骸を見ない。みんなあっけなく渡ってしまったらしい。そのせいかどうか、その川の先のエリアで、ヌーの群れは交通渋滞を起こしていた。これから先、牛のための草が絶対に足りなくなるとマサイの友人たちが顔を曇らせた。実際、マサイマラはまだいいほうで、アンボセリ国立公園などはあまりのひどい旱魃にバタバタと動物が死んでいる。ヌーだけでなく、バッファロー、カバ、象まで餓えて死んでいるサバンナを見て、とても胸が痛む。

しかし苦難はまだこれからだ。この大旱魃のあとには大洪水が来るという。ケニア気象庁は早々にエルニーニョ宣言をして、ケニア全土に警戒警報を出した。これからエルニーニョがはじまり、大雨が降るという。森林が伐採された大地は、すでにその洪水を抑えることができない。被害が出そうな地域の人々に、早めに避難することを呼びかけたが、そうとはいってもどこに行けばいいというのか。今年の後半、ケニアでは未曾有の大災害が起るかもしれないと予想されている。まるで聖書に出てくる話と同じではないかと友人たちは語り合っている。

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