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暴動から一夜明けたキベラでは  by 大西 匡哉


暴動から一夜明けたキベラでは  by 大西 匡哉     2008年01月02日11:27
千晶さんの日記にもあるように、今日1日の昼ごろキベラのリリアン達と連絡が取れて、食料など救援物資を届けに行ってきた。

帰ってきて激しく頭が痛くなり少し休んでいたので書くのが遅くなってしまった。

昨日大荒れだったキベラだが今日はとりあえず落ち着きを取り戻していた。
マゴソのみんなはとりあえずみな無事です。

キベラに一歩足を踏み入れると、道路には横転し火をつけられた車や、破壊され火をつけられたキオスクやバーや教会など、
そこかしこに暴動の爪痕が残ってた。
ECK選挙管理委員会がキバキの勝利を発表したとたん、5分もしないうちに暴動になったとそうだ。

路地にはまばらながらも人通りがあり、道端で野菜などを売っている人の姿もちらほら。

破壊された建物のほとんどがキクユ人のもの。
そしてその報復にルオの商店や家々が狙われ、襲われた。

マゴソも狙われている。数人の男たちが夜どうし警備に立っているという。

みな疲れきった顔の中にも笑顔を見せていたが、顔がこわばっている。
今日は天気もよく、恐る恐る外に出てひなたぼっこをしてるママや子供たち。

破壊された家々の周りに集っている若者たちの顔も疲れ果てていた。
「俺たちはいつでも戦闘態勢だ、これが俺たちの兵器さ。」と足元にコブシ3つ分ぐらいの石をゴロゴロと積み上げている。

「ここには教会が立っていたが昨日の騒ぎで破壊され燃やされた。ここのオーナーはキクユだが私も良く知っているとてもいい人だよ。」
「この通りのすぐ先はキクユ人たちのエリア、ルオの私が一歩足を踏み入れたらパンガでこれだよ。」
と首を切るしぐさをしたのはリリアンの夫のウォルター。

「夜どうし銃声や女たちの悲鳴が聞こえていた。もううんざりだよ。」マゴソの警備に立つ青年オモンディ。

マゴソの2階からは少し丘になっているて線路が通っているのが見える。
「あの丘の上にあった店が群集に襲われ火をつけられた。中から子供を抱えたママが出てきたらあっという間に群集にボコボコにされてちゃったんだ。
僕もキクユだから一歩外に出ればパンガでやられちゃうよ。」とマゴソに帰省中のトニー。

その線路の先はラインサバと呼ばれるエリアでキクユ人たちの商店が沢山立ち並んでいる。
昨日まで線路の上ではキクユ対ルオの一進一退の攻防が繰り広げられていたという。

「殺しあっているのは私たち貧しい人々なの。私たちに罪はないのよ。でも今頃キバキもライラもどこかの豪邸でふんぞり返っているに違いないわ。
苦しまなきゃいけないのはいつも私たちスラムの人間たちじゃない」
とリリアン。

「今日はほんとに静かだ。でもまだ安心は出来ない。3日にODMの集会がウフルパークで予定されているが、また機動隊と衝突することになるだろう。」

「キバキが八百長をやったんだ。あんなやつに任せていてもオレたちの生活は何も変わらない。ライラこそが俺たちの大統領だ。
ライラが大統領になれば俺たちももっといい職にありつける。もちろん3日の集会にも行くつもりだ。」とルオの若者。
彼は昨日の集会にも行こうとして軍隊と衝突した。

怪我人も見かけた。腕に包帯を巻いた顔見知りの警官に「大丈夫かい?」とたずねると
「もう治療したから大丈夫だよ。すごい騒ぎだったからね。これがアフリカなんだ。ところでマサヤ、オレのビールはどこだい?」
と負傷しながらも冗談を飛ばす。

マゴソはキクユ人地区とルオ人地区の境界線に近いところのルオ人地区に位置している。
リリアン達に「今すぐみんなでうちに避難しようよ。またいつ暴動が起こるかわかんないよ。」というと、
「そしたら学校が燃やされちゃうわ。誰が学校を守ってくれるの?」とリリアン。

「でも学校よりも命のほうが大事だよ。」というと、しばらく笑い続け、

「そうね、本当にその通り。十分に気をつける。万が一って時は連絡するわ。」

「せめて子供たちだけでも避難したら?」と言うと

「子供たちがいるから私たちも元気が出るの。いろいろ手伝いもしてくれるし。」

それでも小さな子供たちや不安定な子供たちはすでにどこかに避難させていた。

帰り道にエフェィーに会った。ミレレの一曲目で元気な声を聞かせている女の子だ。
彼女はキベラの入り口のすぐそばに住んでいるので警察に守られていて比較的安全だという。
握手すると明るい笑顔を見せてくれた。「怖くない?」とたずねると「怖いよ。そこの店も壊されちゃったよ。」
見ると目の前の一角がつぶれていた。

報道されている死者数は250人に上がっているがこれからさらに増え続けるだろう。

エルドレットでは教会が放火され中にいた30人以上が焼死した。そのほとんどは女や子供たちだったようだ。

マテラやバーティやカテンベたちのいるミリティーニでもキクユ人の経営するキオスクが襲われ、8人が殺されたという。
電話で話すマテラの声にも今日は元気がなかった。

アメリカやイギリスやEU、東アフリカ各国も声明を上げている。

隣のタンザニアでは「タンザニア人の多くが隣人としてキバキが強引に政権に就いたことに驚き、心配している。」
「権力者が権力を振るう、これは好ましくない伝統だ。この危険な伝統を私たちは捨てなければならない。」
「指導的立場にあるものたちがもっと冷静にならなければ。よき指導者を得てこそ国民は平和に暮らすことが出来るのだ。
指導者たちが歩み寄らなければならない。」

しかしキバキもライラもお互い一歩も譲らないどころか火に油を注いでいるような状態。
ライラは自分たちで新たな政権を設立すると言って3日のODMの集会を呼びかけている。
政府はこれを断固みとめないとし、また軍力で制圧するだろう。
またしても血を流さざるをえないのだろうか?

対立する政府とODM。しかし血を流しているのは何の罪もない人々。

ODMに煽られて自由を信じ自らの命を無駄にするルオの若者たち。

軍のジープで走り回りライフルで群集を威嚇、発砲し命を殺める兵士たち。

自由のために掲げたコブシのやり場をなくし、怒りに我を忘れて何の罪もない人々に襲い掛かるものたち。
そしてその混乱に我を忘れ、欲にかられて商店などを襲うものたち。

餓えと恐怖に肩を震わせながらながらじっと息を潜めている子供たち。

これだけの罪を作り出す権力とはいったい何なんだ?

「殺しあっているのは私たち貧しい人々なの。私たちに罪はないのよ。でも今頃キバキもライラもどこかの豪邸でふんぞり返っているに違いないわ。
苦しまなきゃいけないのはいつも私たちスラムの人間たちじゃない。」

リリアンの言葉に胸が激しく痛む。

悲しくてしょうがない。

どうかこれ以上ひどいことになりませんように。

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