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希望を持ち続けること、信じ続けること by 早川 千晶


希望を持ち続けること、信じ続けること     by 早川 千晶     2008年01月31日19:33
ティゴニというとても平和な田舎で騒動が起きたというテレビの映像を見て、
ティゴニに住んでいる友人Yさん(長年のアフリカ仲間、日本人)のことが心配になり、電話をした。
私自身も正直、この数日とても動揺してしまっていたのだけれど、彼女と電話で話して気持ちが落ち着いてきた。(ありがとう。)
彼女の話によると、ティゴニではこれまで、紅茶農園などでいろいろな民族がみんなで仲良く働いてきていて、
周辺農家の皆さんの間では民族対立感情なんてまったくなく、戦う気もこれっぽっちもない、みんな今の状況に胸を痛めていると。
騒動を起こしているのはもともとの住民ではなく、外から入ってきたムンギキのチンピラたちで、
ムンギキが人々の感情をむやみにあおるような暴力的なビラを配っていると。
みんなこれまで仲良く一緒に茶摘みをしてきた農民たちや農場主の人々は、ノン・キクユの人々を追い出したいなんてこれっぽっちも
思っていないのに、彼らの身の安全が保証されないような状況がもともとの住民たちとはまったく関係ないところから生まれてきている。
だから、仕方なく、対象となる人々は、自主的に静かに避難して、チーフのキャンプなどに避難していったということだった。
胸が痛くて、涙が出てしまう。
ほんとに平和な、緑豊かな静かな村でのことなのです。
いったい何が起こっているのだろう。いったい誰が何の目的で・・・と思ってしまう。

Yさんと私は、古いアフリカ仲間で、かつて私たち両方とも若かった頃にナイロビで出会い、
アフリカのあちこちで会ったり別れたりを繰り返しながら共にアフリカを歩いてきた旅仲間だ。
その後、彼女も私も、ケニアで生活をはじめ、それぞれにそれぞれの活動を続けてきた。
彼女と電話で語り合う。私たちが大好きなケニアの、美しさや光を信じ続けて希望を持ち続けよう、と。
これまでのいろいろなことが頭に浮かんでくる。
矛盾だらけの世の中だけど、この理不尽な社会の中でも、ケニアの庶民の人々の中にはいつも光があった。
それを見てきたからこそ、私も彼女も、いろんな困難があってもケニアを愛し続けて、ここで生きていきたいと願ってきたのだった。
Yさんと話して、そんな想いがまざまざとよみがえってきた。
彼女の言葉や語り口は、ほんとに優しかった。アフリカの現実から逃げずにまっすぐに向き合って、真剣に人々と付き合い、
奥の奥まで見てきた人だからこそ言える言葉だと思った。

それにしても、こうしてYさんの話を聞くと、やっぱり、報道されている内容や映像、それから受ける印象と、現地で実際に起きていることとでは、
いろいろな意味で温度差があるのかもしれないということをあらためて感じさせられた。
とは言っても、報道陣も、必死で状況を伝えようと努力しているのも事実。
やはり、できるだけたくさんの人と話をして、できるだけ多くの現場を実際に見てみて、その上で、いろいろなことを総合して
実態を冷静に把握していかねばならないのだと思う。
いったい今何が起こっているのかということ、誰もそれを明確におしえられる人はいないし、みんな戸惑い、動揺して、
わけがわからないと感じている。

動揺しちゃいかん。不穏な空気にひきずられちゃいかん。希望を持ち続けよう。と、親しい人々と四六時中励ましあっている。

こんなときでも、(いや、こんなときだからこそよけいに)、マゴソスクールの子どもたちがまっとうに勉強を続けていけること、
命の危険にさらされないこと、恐怖体験からの傷を癒すことができること、未来に希望が持てること、
おなかすかせて苦しまずにすむように対策すること、とにかくそんなことを、もくもくと続けていこう。
自衛することは簡単じゃないけれど、とにかく子どもたちにとっては、とにかく不安をあおられるような会話を聞かせない、見せない、
明るく希望を持っているフェアな大人たちと接触する、などなど、子どもたちにとって不安要素をできる限り取り除いていくことが大事だと思う。

今週はキベラで騒動再発だったせいでなかなか進まずもどかしい、マゴソスクール卒業生たちの進学先の手配。
昨日は大進展があった。
キテンゲラのNGOサイディア・フラハの荒川さんとカルリ先生がとても親切に助けてくれた。
前夜に家が全焼してしまったオギラ先生と、リリアン、私、そしてマゴソ卒業生の女の子たち2人とで、昨日はサイディア・フラハに行ってきた。
サイディア・フラハには、女子と男子のための職業訓練校があるのだが、その学校と寮にマゴソから女子1名を受け入れてもらえることになった。
それにかかる費用は、サイディア・フラハが支援してくれるということで、とてもありがたい。
マゴソ生徒たちは誰もがセカンダリースクールへの進学を夢見てがんばっているが、現実は厳しい。
家庭事情も複雑で貧困に苦しみ、一般家庭の子どもたちのようには順調な小学生生活を送れてこなかったマゴソの子どもたちにとっては、
十分な学力を得ることにも大きなハンディがある。
それでもがんばってKCPE受験までたどり着いた10名。なんとか進学させてあげたい。
サイディア・フラハの洋裁学校で、メリーを昨日から体験入学させてもらった。
まずは2日間、体験してみて、それから双方で話し合って本格的に入学するかどうかを決める。
優しい荒川さん(あだなはアンコー)、そしてお父さんのようなカルリ先生、お母さんのような寮母さん、
優しい人々に温かく受け入れてもらって、メリーは緊張していたけどとても嬉しそうだった。
両親も祖父母も死に、働かされるためにキベラに連れてこられて、言葉に尽くせないような苦労を重ねてきたメリー。
ほんとに幸せになってもらいたい。

セカンダリースクールに進学できる学力を身につけることができた6名(男子3名、女子3名)の進学先が見つからずにやきもきしていたけれども、
まずは男子のほうは昨日なんとかなりそうなめどがついた。
この6名の子どもたちはルオとルヒヤだが、今の状況でいろいろと難しくなっていた。
キスムやニャンザ周辺の学校にも連絡を取っていたが、状況が悪くて学校を再開できないところが多い。
学校に戻りたくても子どもたちが戻れないでいたり、危険地帯を嫌がって転勤を希望する先生たちが続出。
さらに、地域によってはルオの子どもたちを学校から追い出しているというような地域も実際にあるということを先生たちがあちこちから聞いてきた。
子どもたちにもそんな影響が出てしまっているとは、やるせない気分になる。
そんなことも考慮しながら、進学先を探さなければならない。
できれば、ナイロビに出来るだけ近いところで、訪ねて行きやすい場所が安心でもある。
サイディア・フラハで相談に乗ってもらい、カジアドの学校を紹介してもらった。さっそく、カジアドまで行くことにする。

マゴソスクールのようなインフォーマル・スクールは、何から何まで何かと不利な条件がいろいろとある。
KCPEを受験は、全国統一試験とはいえ、公立小学校と、私立やインフォーマル・スクールというのはカテゴリーがわかれていて、
(だけど受ける試験内容は同じ。)、公立のセカンダリースクールはまず最初に公立小学校の成績優秀者に対して招待を送り、
その中にはインフォーマル・スクールの子どもたちは対象にされていない。
学費が安いが内容がいい州立セカンダリースクールにマゴソの子どもたちを進学させてあげたいと思うが、
インフォーマル・スクールの子どもたちはいかに成績優秀であっても州立セカンダリースクールからの招待はもらえない。
そうなるとどうなるかというと、まずは州立セカンダリースクールに招待された公立小学校の生徒たちが入学するのを待ち、
それが定員に満たなかった場合のみ、その空いた席に対してインフォーマル・スクールの子どもたちの入学チャンスがはじめて生まれる。
(なんとも不公平だと思うが・・・)

そうやって入学チャンスをもらうためには、校長先生に直接話をするしか方法がない。
紹介されたカジアドの学校に向かう。

最初に女子の学校から挑戦。
チャンスを求める父兄たちが、ずらーっと並んで待っていた。
私たちの番になり、校長先生に会った。
キベラでがんばってきた、困難な事情を抱えた子どもたちなのです・・・という事情を説明し、何とかチャンスをもらえないだろうかとお願いした。
そこの校長先生はとても親切で優しい女校長だったけれども、レベルの高い人気女子高だということで、
マゴソの女子たちにはとてもチャンスがないことがわかった。
がっくり。

次に、男子校に挑戦。
とても美しいサバンナが広がる風景。牛の群れを連れたマサイが通り過ぎる。
学校に着くと、びっくりするほど広々としたグラウンド。空が広い。
こんなところで勉強できたら、どんなに素晴らしいだろう・・・とみんなでため息をつく。
(トタン屋根ひしめきあって、みんなでぎゅうぎゅう詰めの中に、最近じゃ催涙爆弾まで投げ込まれている我らがキベラスラムとはえらい違いだ。)

校長先生が会ってくれた。だけど、すごく怖い顔をしている。
リリアン、オギラ先生、ひるむ。
怖い校長に話をはじめる。
「私たち、キベラスラムから学校を探しにきたのですが・・・」
そうはじめたとたんに、校長先生は、
「私たち州立学校は、生徒が学校を探すのではなく、学校が生徒を探すのだよ。無理ですよ。」
いきなりそう言って、用はないです、さようなら。という雰囲気だった。
そこを何とか。と切り返す。
「私たちは政府も援助してくれていないインフォーマル・スクールで、いくら優秀な成績をおさめても、公立セカンダリースクールからの
招待の中に入れてもらえないのです。もちろんそういう事情をご存知ですよね? 複雑な事情の中、がんばった子どもたちなんです。
なんとか席をくれませんか。」

校長、ますます怖い顔で、言う。
「それなら、役所に言って申請しなさい。ジョゴーハウスという建物の中ですよ。そういう子どもたちのための相談窓口がもうけられているじゃないの」

そりゃ確かにそうだ。しかし、それはタテマエの話で、教育省に相談してもキベラのインフォーマルスクールなんかいつも虫けら同然に扱われ、
申請してもちっとも話を進めてくれない。そうやっていつも、コネがある人だけがチャンスを得て、弱者はチャンスを得られないのが
この国の現実なのである。

「うちの男子たち、3名に何とかチャンスをください。お願いですお願いです。これ、見てください。こんなにがんばったんだから。」
KCPEの成績表を見せる。
校長は横目でちらりと見て、
「ふん、この点数じゃどっちにしてもダメだな。見たまえ。」
と言って、招待した生徒のリストを見せる。

ううう。それを見て、こっちもひるむ。
最高得点は420点。最低が310点の、ズラズラーっと大量の生徒のリストだ。
マゴソ男子の最高得点3名は、310点、303点、291点。

ところがオギラ先生が食い下がる。
「この子たちが、どれだけ不利な条件でがんばったかを説明させてください。これだけ不利な条件でこれだけの点をおさめたのだから、
セカンダリーに入ったらもっともっと伸びると信じてます」

ところがオギラ先生の説明も途中で打ち切り、校長は、
「そんな困難な生活状況なんていうのは、ケニアの子どもたちすべて同じじゃないか。私だって、貧しい家庭だったが努力したよ」

厳しい。

ああー。。。こりゃダメか・・・

だけどあきらめてはならない。
最後の一押し、「そこを何とか、お願いします。」
必死で頼み込む。
沈黙が流れた。

突然、怖い顔のままの校長が、
「2月9日(土)にまた来なさい。この310点だけ何とかしてやろう。」

えっ? それってOKってこと?

もう一押し。

「1人だけじゃなくて、3人なんです。3人全員、お願いします」

そう押す私を、リリアンが、「ヤバイ」という顔をして止めようとするが、もう引き下がらなかった。

さすがに、校長は苦笑した。(このときはじめて、笑い顔を見せた。)
彼はため息をついて、紙に、10,627 x 3 = 31,871 と書き、私に渡した。
この金を用意してこい、という意味だった。
1学期分の、3人分の金額だった。

オギラ先生が、うへっ!と思わず叫んだ。(飛び上がらんがばかりに喜びたいところを必死で押さえていた。)

最後に、校長はリリアンたちに、ルオ語で、「どこの出身かね?」と聞いた。(それまでは、私たちはスワヒリ語で話していたのだ。)
リリアン、オギラ先生ともに、ルオ語で答えた。
校長は、「私も、ニャカッチの出身だよ。もっとも、もう長年、マサイランドに住んでいるがね」
とルオ語で言った。

そう、校長は、ルオ人だったのだ。

男子3名は、全員がルオだ。成績表の名前を見て、この校長は、この子どもたちを受け入れようと思ってくれたらしい。

怖い顔だけど、実は本当にいい人だということが最後にはよくわかった。
私もルオ語で「ありがとう」と「さようなら」を言ったら、校長は大笑いしていた。

帰りの車の中で、私たちは興奮して、
「あれ、ほんとにオッケーだっていう返事だったよね!?」
「うん、3人オッケーだってほんとに言ったよね?!」
と繰り返して叫び続けた。

というわけで、マゴソの男子3名は行き先が決まって、ほんとによかったのだが、
実はこのようにホントはダメなことも同じ民族つながりで可能になったり、コネがあるせいで点数低い子が入学になり点数高い子に
チャンスがなくなったり、というようなことが普通に行われるのがケニアの実態であるということがこの経験からよくわかった。
逆に考えると、こういうことで反対に、民族対立から不利な状況に陥る子どもたちもたくさん出てくることも考えられるわけだ。
今回のマゴソの子たちの場合は、この校長のおかげで進学先が決まって助かったのであるが。。。。

さて、そこからの帰り道も、いくつかの学校をトライしたが女子高はいまだゲットできず。
期待に胸を膨らませていたナンシーは、ガッカリした表情。
まだあきらめずに探し続けるからね。と励ました。
次はウカンバニで挑戦してみる。

その後、エンブから用事でナイロビに出てこられていたケニア天理ソサエティというNGOの塩尻さんにお会いする。
塩尻さんは、エンブの職業訓練校で、男子1名、女子1名をマゴソから受け入れてくださるというありがたいお申し出をくださった。
ほんとにありがたい。
何度も路上生活から行ったり来たりだったムセベニが候補にあがっている。本人は職業訓練校入学を希望しているので、これから話し合いだ。

女子3名も早く決まりますように。。。。

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